●高畑尚之博士（総合研究大学院大学　理事）
「集団遺伝学理論および分子進化に関する研究」

 

高畑尚之博士は世界をリードする理論集団遺伝学者として、DNAに刻み込まれた進化の歴史を解明するための集団遺伝学理論の発展に大きな貢献をされました。当初DNA データは主にミトコンドリアで集積されましたが、博士はいち早くこの問題に取り組まれ、核外遺伝子の集団遺伝学理論を完成されました。その後、遺伝子系図学理論の発展に多くの重要な貢献をされますが、特に注目されるのは、対立遺伝子の歴史を追う系図学理論を独自に構築されたことです。これにより、中立遺伝子だけではなく自然淘汰が働く遺伝子データも定量的に扱えるようになり、MHC 遺伝子等の多様性維持や分子進化機構の解明が大きく進みました。

 

このほか分子時計に関する理論的研究等、一般的な分子進化機構の解明にも重要な貢献をされています。

また理論的な研究ばかりでなく、これらの理論を使い特にヒトの進化に関する数々の研究成果を上げられました。なかでも配列データを使ったヒト及び類人猿の祖先集団構造の推定は独創的なもので、これらの成果も含めてヒトの起源に関する著書を長年の共同研究者であるヤン・クライン教授とまとめられました。最近では生物と環境との相互作用の問題にも視野を広げ、遺伝子の退化に関する研究等を活発に続けておられます。

このような博士の多岐にわたる独創的な研究業績は世界的にも高い評価を受けております。