●諏訪元博士(東京大学・総合研究博物館 教授)
「古人類学上の重要化石の発見と解析」

 

諏訪元博士は、米国カリフォルニア大学バークレー校に留学して以来、Tim White氏らとともにエチオピアを中心としたアフリカの古人類遺跡から多数の化石を発掘するとともに、それらの詳細な解析に携わってきた。特に、ラミダス猿人(Ardipithecusramidus)の全身骨格を含む多数の化石を1990年代に発見した後、それらの化石を20年近くかけて詳細に解析して、アウストラロピテクスより古い時代の人類像を世界で初めて明らかにした。特に歯と頭骨の形態解析を主導し、その中で新しい分析法を開発するとともに、骨盤、下肢、上肢の化石骨の形態評価と解釈にも寄与し、さらには古環境、ヒトと類人猿の共通祖先像、ラミダスの進化的意義等に関する新たな諸仮説の提案に大きく貢献した。

 

これらの諸成果は米科学誌Scienceに2009年、8本の論文として発表された。このうちの2編(Science, 326:94-99,2009; Science, 326: 68e1-7, 2009)は諏訪氏が筆頭著者である。これらラミダス猿人にかかわる業績のほかにも、Australopithecus boiseiの頭骨化石の発見(Nature, 389:489-492, 1997)、早期更新世の地層からの Homo erectus化石の発見(AnthropologicalScience, 115:133-151, 2007)、ゴリラの系統と想定された類人猿化石の発見(Nature, 448: 921-924, 2007)など、多数の論文を発表している。

 

日本を代表する古人類学研究者というだけでなく、化石研究全体から見ても、きわめて顕著な業績をあげている。